物語

世界と、和と、
ヘラクレス

私たちは昆虫を売る会社ではありません。
ひとつの文化を、静かに創ろうとしています。


第一章 — なぜ文化を創るのか

売るのは、標本ではない。

世界最大級の昆虫、ヘラクレスオオカブト。その一頭の背には、人の手のひらほどの、深く艶やかなキャンバスがあります。私たちはそこへ、桜を、紅葉を、雪を、金の継ぎ目を描きます。けれど、私たちが本当に手渡したいのは、絵の描かれた昆虫という「物」ではありません。

私たちが創ろうとしているのは、ひとつの見方です。命を、美術として遇するまなざし。自然を、贅沢の対極ではなく、その頂点として見る態度。「ヘラクレスを飾る」という行為が、いつか床の間に掛け軸を掛けるのと同じように、静かで、誇らしく、あたりまえのものになる。そういう文化を。

だから私たちは、自らを「ヘラクレスという文化を創る会社」と呼びます。昆虫を売る会社であることを、超えていくために。

信条

自然こそが、最高の贅沢である。

第二章 — 世界と、和が出会う

世界最大級の昆虫という、和のキャンバス。

ヘラクレスオオカブトは、中南米の雲霧林に棲む、世界でも最長級の甲虫です。その名の由来は、神話の英雄ヘラクレス。力の象徴であり、地球という舞台のうえで、生命が到達しうる大きさの、ひとつの極点です。

そこへ私たちは、日本の四季を招き入れます。散りぎわの桜。燃えるような紅葉。音もなく積もる雪。梅雨に濡れて色を変える紫陽花。移ろいを美とし、余白を尊び、不完全のなかに完全を見る。世界のどこにもない、日本の感性を。

世界最大級の昆虫と、和の美意識。そのふたつが一頭のうえで出会うとき、標本は作品になり、昆虫は文化になります。これは、越境するアートです。私たちは日本から、世界へ、この静かな驚きを届けます。


四つのモチーフ

四季を、一頭に。

桜・紫陽花・紅葉・雪。日本の一年を、生命のキャンバスへ移す試み。


第三章 — 物語を支えるもの

美のために、命を奪わない。

生き物を用いた美術は、しばしば倫理の壁の前で立ち止まります。私たちはその壁から目を逸らしません。むしろ、そこにこそ私たちの物語の核心があると考えています。

私たちが描くのは、養殖により生まれ、天寿を全うした個体のみです。作品のために命を縮めることは、決してありません。役目を終えた一頭には、供養を。命への敬意があってはじめて、その背に美を描くことが許される。私たちはそう信じています。

この倫理は、物語の脚注ではありません。物語そのものです。命を全うさせたからこそ、ヘラクレスに描くことが赦される。その静かな筋道が、私たちの文化を成り立たせています。

約束

We never kill for art.

第四章 — これから

一頭ごとに、一度きり。

同じ一頭は、二度と生まれません。だから作品は、すべて一点物。作品証明書と、固有のシリアルとともに。